2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
無料ブログはココログ

« ときめきミルクティー | トップページ | やっちもーた »

2008年10月17日 (金)

恐怖の連鎖

私は、殆ど本を読まない。




読むのは極く限られた、TV雑誌のみで、

特に小説やエッセイは全く読まなくなった。




それまでは、推理小説が好きで、西村京太郎の作品などを

好んで読破していた。



また星新一氏のショートショートは、全巻持っている。





だがある日を境に、私は本を読めなくなった…。


理由は至極簡単で、文章に集中出来なくなったのだ。


周りの音が気になって、途切れてしまう。


それが何度も続いて、やがて、読まなくなった。




それは喘息で入院した時だった。

数日間の意識不明が続いて、気づいてからも、

もうろうとした日々が続いていた。


不運な事に、その間に、抗不安剤を全く飲んでいなかった。


当然、血中濃度は下がり続け、

やがて、切れた。



途端に、あらゆる音に対する恐怖が甦った。


看護婦の声。


大部屋の他の患者同士の会話。


廊下での話し声。


テレビの音。




それが、2001年9月11日…

病院中が、アメリカ同時多発テロの話題で騒がしくなった日だった。


『大勢の人が死んだんだって』


この会話が脳裏に突き刺さる。


痛い!




これまでは抗不安剤の力で、『死』と言う言葉を

ふるいに掛けて、除けて来た。


しかしその時は出来ず、

私は、大声で叫んでいた。



うるさぁーい!




慌てた医師が鎮静剤を打ってくれた。

そして、その日のうちに、私は個室へ移った。


翌日朦朧とする意識のまま、外出し、精神科へ連れて行ってもらい、

抗不安剤をもらった…




それ以後、本に集中出来なくなった。

とにかく周囲が気になってしょうがない。


周囲の視線や声では無く、音なのだ。



ドアの開く音、階段を上下する音、特に叫ぶ音には

注意を払う。


今の世相のせいでは無いが、いつ何時、誰が襲って来るか分からない。




だから、電話が鳴っても出ないし、玄関のチャイムが鳴っても

私が出る事は無い。


階段には、人感センサーを付けていて、

家族の者が二階に上がるのを事前に察知し、音が鳴る。


これで心構えが出来る。



急にドアをノックされるのを防ぐために付けた。





それでも抗不安剤を飲んでいるので、まだ楽な方…


以前には、夜も一人で寝る事が出来ず、

家族と一緒に眠った事もある。



ホントに酷かった。




それでも恐くて、二日置きに、病院に行っては

抗不安剤の筋注をしていた。



悔しくて、悔しくて何度も泣いて、

挙げ句に救急車を呼んで、

夜中にも抗不安剤の筋注をしてもらった。



地元の病院では、出来ないと断られたからだ。







今も予期しない音は怖い。


しかし想像出来る音は平気なんだ。



例えば、犬の叫び声、夜の車の音、救急車の音、

病院での赤ちゃんの泣き声、患者同士の病気に関する会話など

時と場所が一致すれば、全く恐怖を感じない。


更に不思議な事に、女性の声は何ともないのに、

男性の低い声には、ビクッと驚く事が多々ある。



周期数の高い声は大丈夫なのだ。






そんな訳で、私は抗不安剤が欠かせない。



もう随分病院に通っているが、そんな訳で

精神科の入院歴は一度も無い。




それに本を読まない理由がもう一つ…


何んか、本に書かれている登場人物の人生より

自分の人生の方が、遥かに劇的ではないか、

と思ったりする。



『ホームレス中学生』に至っては、勿論読んで無いし、

噂話を聞いただけだが、


あれは身体が丈夫だから出来たのであって、

私のように感染症に弱い場合、

あっと言う間に死んでるでしょう。



不幸を自慢するような人間にはなりたくないし、

ましてや、健康な身体を持っている人の話(エッセイ)は、



単なる自慢話にしか思えない。





人は、自分が幸せだと、他の人の不幸話に涙を流す。



本を読んで、映画を見て、ドラマを見て、テレビを見て、

不幸な話ほど話題になり、感動するのは、


豊かな感性が息づいている証拠

と同時に、幸福を実感することが出来るからではないか?




私は悲しいかな、薬のせいかもしれないが、

涙を流すことが、今は無い。



感情が乱れるのが怖いのだ。




感情が乱れると、平静になるまでに時間が掛かる。




そして、恐怖の連鎖が始まる…

« ときめきミルクティー | トップページ | やっちもーた »

闘病」カテゴリの記事