エピソード ZERO 遺伝
私は、伴性遺伝である。
この事実に初めて気づいたのは、小学校での集団検診の時だった。
身長や体重、視力、握力などを調べる全校生徒対象の健康診断である。
その中で、色盲と判定された。
※ゲノム(生物の染色体の基本数となる、染色体の一組。通常2本ずつ)は、女性では1本ずつのX染色体があり、体細胞では性染色体の構成はXX。
男性ではXをもつ染色体と、Yをもつ染色体があり、性染色体構成がXYになっている。
色盲の遺伝子は、X染色体上にあり、劣性遺伝する。
女性では、X染色体が2本あるので、仮に父親側の遺伝子に色盲があっても、他の1本はX染色体なので、見かけは正常に見える。
─基礎遺伝学(黒田行亜昭著)より編纂転載
早い話、伴性遺伝では、その遺伝子が母親にあるか、父親にあるかによって子供への伝わり方が違って来るという事らしい。
父親が色盲であっても、母親が正常であれば、子供は男女とも正常であるが、
母親が色盲であれば(この場合母親は気づいてない事が多い)、
父親が正常でも、女の子は見かけは正常で、
男の子は全て色盲になる……という理屈らしい。
学校で見た、あの円形の中に種種の色が小さな円で描かれ、
数字を読みとる検査で、
私は、まぁ見事にピッタリ。
緑系の中間色が識別出来ない、第二色覚異常と判明した訳だ。
他の同級生は全員、あの図形の中に隠れた数字を読みとれた。
勿論、正常なら読みとれない配色図形もあったらしいが、
私には、どうしても数字が見てしまう。
それが色盲の現れだった。
そして私は、小学生の間、妙なメガネを付けていた。
真っ赤なレンズのメガネだ。
このメガネで見ると、普段は見えない色が見えてくる。
当然、あの図形色の中の数字も、全く違う…正しい数字が見えた。
他の人は、こんな色の世界を見ているんだなぁ───
そんな風に、自分の情けなさを感じた事を覚えている。
何でも、私が見ている光景や色は、牛や犬などのホ乳類に近いらしい。
我が家のワン子も、こんな景色をみているのだなぁ、
と最近しみじみ。
大学の時、土壌検査技師の免許が欲しくて、
まず始めに、劇毒物取扱免許の試験を受けた。
私は、ほぼ完璧だと思っていたが、あっさり不合格。
あとになって知ったが、色盲、色弱ともに、免許取得は不可だった。
あ~、そうなん、なるほど。
他にもダメなものが幾つかある。
例えば、当時は小型船舶免許がダメ。2004年からは小型船舶のみOKになったらしい。
一部の自治体では、バスの運転手はダメとか、電車の運転士もダメ、
警察官もダメだし、パイロットや整備士、管制官などの航空業界もダメ。
やはり色そのものを識別する仕事は、かなりのハンディがある。
と言うか、実際、ムリです。
そこで今、目に優しいデザインが増えてきました。
非常口マークに代表される、ユニバーサル・デザインと呼ばれるものです。
時々、感じるのです。
私の見ている風景と、他の人の見ている(特に女性の目に映る)風景とは、
全く別世界なんだ、と。
だから女性には、美しいものを生み出す力があるのかもしれませんね。
カラフルな洋服とかアクセサリー、それに色鮮やかなお弁当とか。
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