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2009年2月 6日 (金)

エピソードⅡ 浸食

それが、これまでの生涯で最も驚いた瞬間だった。

「就職しろ」

と、父が唐突に言った。

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私は幼い頃から、殆ど勉強しない子供だった。

自分は農業を継ぐんだ、と物心ついた頃から、ずぅ~っと思っていた。

だから親の敷いたレールの上を、ただ黙々と歩いて来た。その間、

他の事は全く考えた事がなかった。

中学の時、初めて、近くの大規模農家に「慣れ」の為、泊まった。

でも…今想い出すだけで、涙が出てくる。

それほど、一人が淋しかった……

高校入学の時も、受験勉強を一切した記憶が無い。


その後、大学へ進む。

その時も、全く勉強しなかった。

基本的に、頭が良かったようで、特に物理が大好きだった。

しかし大学生活は悲惨なものとなった。

まず、一年の時に出来た友達…気のいい仲間になったが、

全員二年の時に中退した。

家庭の事情が殆ど。

なんで、私の友達だけ辞めてしまうのか、悪夢の世界に居るようだった。

更に、告白した女の子は…「ごめんなさい。男性を愛せないんです」

と、おっしゃったのでした

2007年「牛に願いを」と言うドラマが放送されたが、まさにあのまんま。

実習があるのだ。しかも夏期の間、農家に泊まり込む。

所がこれが私には不向きだった。

体力がついていかないのだ。

秋田から来たと言う女の子は、これまた凄い働き者で、

私は更に比べられているようで、肩身が狭い。

おまけに、私は疲れやすく、すぐサボる癖があった。

このいわゆる実戦で、私には、農家・酪農は無理だと悟った。

あの頃の事は、何一つ私の身になったものはなかった。

それでもその時辿っている道は、正しい道だと、とことん信じていた。

そして私は、挫折というか、疲労感というか、安堵感というか、

複雑な思いを抱いて、卒業した…

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地元に帰り、私はてっきり、実家を手伝うものとばかり思っていた。

しかし、父は言った。

「まず、就職しろ」

その時、私は思った。

「就職」って何?

働くって何?

何んと、それまでの私は、家を継ぐ事が人生だと信じて生きて来たので、

就職と言う言葉の意味が判らなかった。

初めて耳にする言葉だった。

常識では考えられない事かもしれない。

殆ど全ての若者が直面する大問題だと言う事は、そのあとに知った。

そして私は、父の言われるがままに、と言うより、

手を引かれた子供のように…

父の選んだ就職先に就職した。

…しかし、迷い込んだその職場は、悪魔のように、私の身体と精神を蝕み始める。

私の人生の崩壊が始まった…

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