偏見はいつ始まったか
今では鬱は社会病とまで言われるように、多くの場所でこの言葉を目にするし、
羅患している人も多くなって来た。
しかし精神病が認知されるようになったのには、日本史上類希な事故の発生が、
きっかけとなった事は、若い人にはあまり知られていない。
それが、羽田沖日航機墜落事故である。
1982年(昭和57年2月9日、福岡空港から羽田空港に向かっていた、
日本航空350便(DC-8型機)が、午前8時44分7秒、羽田空港手前の沖合の浅瀬に墜落した。
この墜落により乗客24名が死亡、乗務員を含む149名が重軽傷を負った。
この事故の直接の原因は、機長の操縦によるものだった。
本来、着陸した時に掛けるエンジンの逆噴射だが……機長はその遙か手前で操縦桿を下げ、
エンジン4基のうち2基の逆噴射装置を作動させた。
日航機は、沖合に立つ誘導灯に車輪を引っかけ、海に墜落したのだ。
何故、この時、機長は逆噴射装置を作動させたのか……
本の帯にある「キャプテン(機長)、やめてください!!」(←正確にはこっちが正しい)とは、
その時、副操縦士が咄嗟に叫んだ言葉だ。
その後の捜査で、機長にこのような異常な操縦を行わせたのは、
「妄想型精神分裂病」(現在の病名は統合失調症)による精神的変調であった。
しかし当時の報道では、「心身症」と名称が使われ、心身症は恐い病気なんだ、
と、世間が認識し、それは精神病全体にまで広がってしまった。
この事故で問題になったのは、会社の管理態勢もさることながら、
一部では大量無差別殺人ではないか!?との声も聞かれた。
それは、その後の捜査で、精神鑑定により統合失調症と診断され、
心神喪失の状態にあったとして検察により不起訴処分となった事が挙げられる。
被害者家族は誰に怒りをぶつければいいのか?
精神病なら、どんな犯罪も許されるのか?
しかし最近の司法の判断を見ると、心神耗弱でも重大犯罪には厳罰を、
という傾向が増えたように思う。
この事故がなければ、精神病への偏見は、どうなっていただろう……
私には、とても戦慄すべき事件・事故として、今でも記憶に残っている。
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